【要約】父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 / ヤニス・バルファキス

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〈この記事はこんな方におすすめ〉

・書籍「父が娘に語る経済の話」の要約や感想を知りたい

・未来を決める法則について学びたい

・世界を曇りなき眼で見たい

 

〈この記事によってわかること〉

・書籍「父が娘に語る経済の話」のエッセンス

・現代の世界はどんな仕組みで動いているのか

・一部の人たちだけに富が集中する理由

 

ヤニス・バルファキスさんの「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」を読んだのでその書評と要約をします。

 

 

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格差はなぜ生まれたのか

すべての格差は農耕社会で作物の余剰ができた頃から始まった。

農作物の余剰によって文字が生まれ債務と通貨と国家が生まれた。

それらによる経済からテクノロジーと軍隊が生まれた。

 

西欧諸国の強さの起源

今日の世界を実質的に支配している西欧諸国がなぜ強い立場を手に入れたのかを考えてみよう。

 

ユーラシア大陸の土地と気候が濃厚と余剰を生み出し、余剰がその他の様々なものを見出し、国家の昔支配者が軍隊を持ち、武器を装備できるようになった。

侵略者はウィルスや細菌も兵器として使うことができた。

 

オーストラリアのような場所では余剰は生まれなかった。

まずオーストラリアでは自然の食べ物に事欠かなかったからだ。

人々たちの恵みを独り占めできた。

ノコギリを発明しなくても生きていけたし、余剰をため込む必要もなかった。

テクノロジーがなくても豊かな暮らしができたのだ。

アボリジニが絵や音楽や神話といった素晴らしい文化を発達させたことを知っているだろう。

彼らの文化は他人を攻撃するためのものではなかった。

だからいくら文化が発達していても、西欧諸国の農耕社会の経済が生み出した軍隊や武器や細菌から自分たちを守ることができなかった。

 

逆に気候に恵まれないイギリスでは大量に作物の余剰を貯めないと生きていけなかった。

航海術は生物兵器も余剰から生み出された。

そうやってはるばるオーストラリアまでたどり着いたイギリス人にアボリジニが叶うはずがなかった。

 

世界には人間を麻痺させるものが溢れている

ショッピングセンター

構造・内装・音楽など全てが人の心を麻痺させて、最適なスピードで店を回らせ、自発性と創造性を腐らせ、必要のないものを買わせてしまう。

マスコミ

テレビや新聞は、特定の人々の利益のために大勢の人々や地球環境を犠牲にするような政治判断に大衆の合意を取り付ける手段になっている。

経済学

政治信条を人々に刷り込む強力な手段が経済学である。

 

これからの世界

ケインズの予言

「私たちの孫の世代になれば金銭を溜め込むことはある種の病気とみなされるようになるだろう。金銭への執着は犯罪的で、精神病のようにみなされるだろう。」

ケインズがそう書いたのは1930年代で、製造工程が完全に機械化されるのは遠い先のことと思われていた。

 

機械の奴隷ではなく主人になる

我々人間は、機械を共同所有することで、機械が生み出す富を全ての人に分配したほうがいい。自分が生み出した機械の奴隷になるのではなく主人になれるような社会を作る他に道はない。

 

では、どうしてそうできないのだろうか?

機械や土地や銀行を所有している、本の少数の権力者たちが猛烈に反対するからだ。

 

当たり前のことに疑問を持ち続けよう

人間は自分が何かを持っていると、それを当然の権利だと思ってしまう。

何も持たない人を見ると、同情してそんな状況に怒りを感じるけれど、自分たちの豊かさが彼らから何か終わった結果かもしれないとは思わない。

 

人間は自分が何かを持っていると、それを当然の権利だと思ってしまう。

何も持たない人を見ると、同情してそんな状況に怒りを感じるけれど、自分たちの豊かさが彼らから何か終わった結果かもしれないとは思わない。

 

貧しい人がいる一方で、金持ちや権力者が自分たちがもっと豊かになるのは当然だし必要なことだと信じ込むのはそんな心理が働くからだ。

しかし金持ちを責めても仕方が無い。人はだれでも自分に都合の良いことを当たり前で正しいと思ってしまうものだ。

 

それでも格差が当たり前だと思ってはいけない。

もし君が格差があることに腹を立てるなら思い出してほしい。

どこから格差が始まったのかということを。

 

参考文献

映画「マトリックス」

ジャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」

リチャード・ティトマス「贈与関係」

ロバート・L・ハイルブローナ「入門経済思想史 世俗の思想家たち」

マーガレット・アトウッド「負債と報い 豊かさの影」

 

まとめ

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」のテーマは、「資本主義は万能ではなく、地球を救うには民主主義に頼るしかない。そのためには、経済学者や経済評論家と呼ばれる宗教家の言説を鵜呑みにせず、自ら経済と対峙せよ」というもの。

 

「娘に語る」という形式をとることで敷居を下げていますが、中身は強烈な批判が込められており、決して子供向けの書物ではありません。

 

たくさんの人々が盲信している経済学をゼロベースで疑うきっかけをくれる良著です。
小説を読むようにグイグイ引き込まれ、一気読みしてしまうことうけあいです。