【要約&感想】おカネの教室/高井浩章【6つ目に関するネタバレ有】

【要約】おカネの教室お金について学ぶ
この記事は約9分で読めます。

<この記事はこんな方におすすめ>

・おカネについて学び直したい

・おカネの調達手段にはどんなものがあるのか知りたい

・若者や子供とおカネについて語る時にいいことを言いたい

 

<この記事によってわかること>

・おカネを調達する「6つの手段」

・おカネを稼ぐことと世の中のつながり

・「楽して儲けていそうな仕事」の現実

 

この記事では、物語形式でお金の調達手段や仕事と世の中とのつながりが学べる良著「おカネの教室」の要約と、読んだ感想について解説します!

 

 

(ちなみに、「6つ目の調達手段に関するネタバレ」を含みますので、ご注意ください)

 

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「おカネの教室」の要約

「おカネの教室」の概要

物語形式

中学生と先生の対話で構成され、物語が進むにつれ「おカネを稼ぐ方法は?」「おカネの正体とは?」といった疑問が解き明かされていきます。

おカネについて学び直す

お金の調達手段や、仕事と世の中のつながりなど、大人が知っておくべきことが詰まっています。

制作の背景

著者が子供に向けて書いたプライベートな文章をベースに書籍化したものです。

 

「おカネの教室」が教えてくれること

お金を手に入れる6つの方法

  1. かせぐ:世の中に富を生み出す
  2. ぬすむ:誰かを犠牲にして儲ける
  3. もらう:「かせぐ」ほど富を生み出さないが「ぬすむ」でもない
  4. かりる:お金や不動産を借りて、期間に応じて金利をつけて返す
  5. ふやす:「かりる」の逆で起きていること
  6. つくる:株式の発行など、信用に値段をつけて相手や市場に認めさせること

 

お金とは信用である

  • お金がお金として通用するのは、みんなが「お金には価値がある」と信じているから
  • みんなが共同幻想を抱いているからお金には価値がある
  • 新たにお金をつくるということは、「これには価値がありますね」と共同体に納得させるということ

 

事業を営むことは大変である

  • 先祖やその親類及び友人、取引先、金融機関などたくさんの関係者がいる
  • 事業を拡大し継続させるということは、たくさんの人の人生を背負うこと
  • 金貸しもパチンコ屋も例外なく、従業員を抱えている
  • 子供が「親の仕事がイヤだからやめて欲しい」という意見が簡単に通るほど世の中は単純ではない

 

労働市場と障害者

  • 障害者が単純作業に従事することは搾取なのか?
  • 障害者にも健常者にも、それぞれ違った「辛いこと」がある
  • 健常者がとてもできない仕事を、障害者が難なくこなせるケースは存在する
  • それぞれの人がそれぞれの仕事で喜びや苦しみを感じるのが、働くということ

 

ピケティの不等式「r>g」

  • ピケティの不等式:r>g
  • rは資本収益率、gは経済成長率を表す
  • 経済全体の成長よりも投資で儲かるスピードの方が早い
  • 投資ができるほどのお金持ちは、どんどんお金持ちになる
  • 株式や不動産への投資は、ある程度の元手を持っている人間にしかできない

 

貸すも親切、貸さぬも親切

  • 借り手と貸し手がそれぞれ冷静に条件を決められる状態であって、はじめて金貸しは仕事になる
  • 実際にお金を借りる人は、冷静な判断能力や十分な知識を持っていないことが多い
  • 返済能力のない人に貸し付けて儲けることは社会にとって善いこととは言えない

 

サラリーマンは勤め先選びがすべて

  • ウォーレン・バフェットの名言に「やる価値のない事は、うまくやる価値もない」とある
  • ダメな会社の中でいくら必死で頑張っても世の中の役には立たない

 

「おカネの教室」の感想

「おカネの教室」を読んで考えたこと

単純化したお話であることを意識して読みたい

本書では、登場人物たちが「お金の稼ぎ方」と「職業」を結びつけて議論する場面があります。

例えば「昆虫学者のおカネの稼ぎ方は、〜に該当する?」「消防士は?」「サラリーマンは?」など。

 

この結びつけ方は「中学生に教える」という形式ゆえのものだと思いますが、大人が本書を読む時は「かなり単純化しているよね」という認識をしておいた方がいい気がしました。

 

なぜなら、実際には1つの職業の中に異なるお金の調達手段が混在することはあり得るため(これは本書でもサラリーマンが「もらう」「かせぐ」どっちもありうるという形で指摘しているが)。

また、ひとりの人間が複数の調達手段を持つことが可能でもあります。

 

例えば以下のように、一人の会社員が複数の調達手段を持つことは可能です。

<複数の調達手段を持つ例>

・サラリーマンとして給与を受け取る(かせぐ)

・不動産賃貸して家賃収入を得る(ふやす)

・自分で開発したアプリを売却する(つくる)

 

そして、複数の調達手段を持てる人間が活躍するのではないかと思います。

 

自分なりにお金の調達手段の分類を作ってみた

お金の調達手段として本書では6つの分類が提示されています。

これは大変示唆に富んだものではありますが、「この6つが最適なのか?」「他の切り口はないのか?」についても考えてみたいと思います。

 

そこでわたしがお金の調達手段を分類するならどうするか?を考えてみた結果、以下の「3段階」が浮かびました。

 

<当サイト管理人が考える、3段階のお金の調達手段>

・レベル1:かせぐ(給与所得など、自分の労働力や時間を差し出した対価を得る)

・レベル2:ふやす(不動産所得など、自分の労働力ではなく資産から利益を得る)

・レベル3:つくる(株式発行など、自分で価値を乗っけて商品を売る)

前提1:「お金を調達する=世の中の富を増やす」である。

前提2:レベルが上がるにつれより早く富の増大に寄与できる可能性が高まる。

 

なお、「おカネの教室」における6分類との差異は以下のようなものです。

 

<「おカネの教室」における6分類との差異>

・「かりる」はなし:借入自体は富を生み出す手段ではない(かせぐ、ふやす、つくる等と同一のレイヤーでない)と考えたため

・「ぬすむ」はなし:いうまでもなく、富を生み出す手段ではないため

・「もらう」はなし:「つくる」のバリエーション(再現性がない「つくる」)に過ぎないと考えたため

 

なんでこんなことを考えたかというと、「おカネの教室」を読んでみて、「調達手段が分類できることを知った人間は、その知識をどう活かせばいいのか」が少し見えづらいと思ったから。

 

自分としては、例えば「お金の調達手段としてはA〜Xまであるけど、AしかできないよりはBやCもできた方がいいよ」「AとBとCはそれぞれ世の中に与える影響がこう違うよ」という話ができた方が、いざ自分が若い人(例えば自分の子供とか)にお金の話をするときに使える知識だと思ったんですよね。

 

なので、わたしが考えた調達手段3段階は、

「レベル1しかできてない人が多いよ」

「個人がより上のレベル2や3を目指した方が世の中全体にとって有益だよ」

「みんなでおカネ調達のレベルを上げていこう!」

という主張を含んだもの(結論に導くための順番ないし階層を持つ分類)となります。

 

会社員をしながらでもレベル2やレベル3の収入源(事業)を自分で持つというのは可能ですしね。

 

「ぬすむ」についてぼんやりと考えた

本書の登場人物である中学生は、「地主はずるい」「先祖からもらったものでいい暮らしをしている」という主張をします。

この主張には、個人的にすごく共感します。

結局、本書において「真実は中学生が想像するようなものじゃないぞ」と大人に嗜められることになるのですが。

 

ところで、仮に「個人的な努力(またはガマン?)と無関係に利益を享受している」ことを「ぬすむ」と表現するのであれば、もしかして「ぬすむ」と無縁な人はいないのでは?とわたしは感じました。

 

だって生まれた時からぜんぶ自分の努力だけで生きてきた人なんかいませんよね?

赤ちゃんの頃なんか、自分で自分の生命を守ることもできません。

食べ物を与えてもらって、安全に眠る場所や着るものを与えてもらって、生きてきたわけで。

みんな何かしら、他者(家族や先祖や地域社会など)から贈与されたものに生かされている部分があるはずだと思ったんですね。

 

そうした自分が享受している利益を自覚し、何かしらの形で還元しようとする人が「大人」だと思うし、逆に「あいつは他人から盗んだもので甘い汁を吸ってる!(わたしは搾取されているのに!)みたいな主張をする人が「子供」なんじゃないかなあと思いました。

 

なので、世の中を「盗んでる人」「盗んでない人」という切り口では自分は見たくないなあ、そういう見方は子供っぽいなあ、と思いました。

 

「おカネの教室」とあわせて読みたい本

レモンをお金にかえる法

「おカネの教室」と同じく、「お金の調達手段」について学べる絵本です。

基本的な会計用語の勉強にもなります。

 

苦しかったときの話をしようか

「おカネの教室」と同じく、USJ再建の立役者である著者が、ご自身のお子さんに向けて書いたプライベートな文章をもとに書籍化したものです。

当サイトで要約と書評を記事にしています。

関連記事:【要約&書評】<5分でわかる>苦しかったときの話をしようか / 森岡毅

 

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙

「おカネの教室」と同じく、カナダの実業家である著者が、ご自身のお子さんに向けて書いたプライベートな文章をもとに書籍化したものです。

ちなみに「娘への手紙」もあります。

 

金持ち父さん 貧乏父さん

超有名な本(副業に興味があるサラリーマンは必読)。

「おカネの教室」にいて「おカネの調達手段6つ」が解説されているのに対して、ロバート・キヨサキさんの著作では「4つのクワドラント」が紹介されています。

 

無限論の教室

「おカネの教室」のタイトルと舞台設定の元ネタになっている本(「あとがき」より)。

素朴な問いからゲーデルの不完全性定理まで、軽やかな笑いにのせて送る異色の「哲学教室」です。

「おカネの教室」に負けず劣らず強烈な先生が登場し、主人公を翻弄します。

ちょっと甘酸っぱい感じも似ています。

 

まとめ

この記事のまとめはこちらです。

・おカネは共同幻想である

・世の中に富をたくさん生み出した人は、おカネをたくさん集められる

・事業をすることは、いろんな人の人生を背負うということ

 

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