「コーヒーではなく珈琲」「珈琲は弱者への嗜好品」そんなこだわりを持つ蕪木祐介さんの世界に触れることができる本「珈琲の表現」。
ネルドリップで美味しい珈琲を淹れるコツや、珈琲の生産・流通の過程・歴史をも俯瞰できる一冊です。
惜しまれつつも閉店した蔵前の珈琲店「蕪木」の店内の様子や食器の写真もたくさん詰まっています。
この記事では「珈琲の表現」のエッセンスをまとめてご紹介します。
本書はこんな方にオススメ
本書は、こんな方におすすめです。
- 蕪木の世界観に触れたい
- 珈琲の美味しい淹れ方を知りたい
- ネルドリップのやり方を知りたい
- 珈琲のバリエーションを増やしたい
本書の構成
本書は、大まかに分けると以下の4部構成になっています。
珈琲を淹れる
蕪木流のネルフィルターを使った珈琲の淹れ方を写真付きで学べます。
道具
淹れ方
珈琲を知る
香り高い珈琲はどうやって生産され流通しているのかを学べます。
珈琲を選ぶ
精選
焙煎
ブレンド
珈琲閑談
エチオピア紀行や、蕪木さんご自身の喫茶店体験が語られます。
珈琲を楽しむ
珈琲に様々なアレンジを加え、豊かに表現し楽しむ方法を学びます。
様々な抽出
他の嗜好品とともに
バリエーション珈琲
本書の教え
珈琲は「弱者への嗜好品」
珈琲は生きていく上で必ずしも必要なものと言うわけではありません。
しかし人間らしく、豊かに生きるためにはとても大切な嗜好品だと思います。
極端に言ってしまうと、珈琲屋として作っているのは「弱者への嗜好品」とさえ思っています。
強い人でも弱るときは必ずあります。
走っていれば疲れるし、気持ちがすさむことも、孤独感や虚無感を感じることもあるでしょう。
そんな時は足を止めて、丁寧に珈琲を味わっていただきたい。
珈琲はどんな時も冷静さと落ち着きをもたらせてくれます。
珈琲を暮らしに取り入れることで、感情の起伏がなだらかになり、穏やかな心を保ちやすくなるのではないでしょうか。
「コーヒー」ではなく「珈琲」にこだわる理由
「珈琲」とは、日本に最初に持ち込んだオランダ人が使っていた「koffie」から当てられた言葉である。
幕末の蘭学者、宇田川榕庵が考案した漢字で、「珈」は訓読みで髪飾り、玉を垂れ下げたかんざしのこと。「琲」もまた意味が近く、多くの玉を連ねて作った飾りのことを指す。
宇田川榕庵は珈琲が木の間に赤い果実を実らせている様子を、女性が玉かんざしを髪に飾っている様子に重ねて「珈琲」と表現したようだ。
私がかたくなに「コーヒー」ではなく「珈琲」にこだわる理由は、はっきり説明できるわけではないけれど、この日本人的なフィルターを経て生み出されたこの文字に、知らず知らずのうちに美しさを感じているからなのかもしれない。
「蕪木」という店名の由来
蕪木の屋号は自分の名字のまま。
かっこいいと言われる事は無いけれども、野暮とも言われない。
ずいぶん味気なくあるが、自分らしく潔いとも思っている。
最初は「蕪木珈琲」にしたかったけれども、同じようにチョコレートを作ることにも力を注いでいるし、「蕪木珈琲チョコレート」では長すぎる。
珈琲とカカオに共通する焙煎に注目して「蕪木焙煎所」というのも考えたが、珈琲豆やチョコレートの商品だけでなく自分が大切にしている喫茶の時間も大切にしてもらいたい。
あーだこうだ考えてるうちに、結局全て削られて、「蕪木」に落ち着いた。
感想
- 写真がお店の雰囲気を表していて、すごく良い
- おすすめの食器や保存缶の紹介が個人的にツボ
- 珈琲のアレンジレシピ紹介が充実しているが、ちょっとハードル高いかも
- 珈琲の知識目当てよりも、著者の蕪木さんの世界観を知りたい人におすすめ
まとめ
「珈琲は弱者への嗜好品」という蕪木さんの珈琲世界はたいへん独特で魅力的です。
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